消費科学研究所
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「毛髪曲げ特性試験」で髪のハリやコシを“見える化”
ヘアケア・化粧品
2016年10月6日
消費科学研究所では、さまざまな毛髪試験を実施し、ヘアケア製品の性能を評価しています。(2015年10月ブログ参照)
今回は、それらの試験の中から、専用の測定機を使用した「毛髪曲げ特性試験」について紹介します。
1.毛髪曲げ特性試験とは
約毛髪サンプルを曲げた際の「曲げ剛(つよ)さ」および「回復性」について測定する試験です。
シャンプーやコンディショナーなどのヘアケア製品で処理した毛髪や、ダメージを受けた毛髪について試験を行うことで、その違いをわかりやすくデータ化(見える化)します。たとえば、ハリ、コシのないダメージヘアを測定すると、曲げ剛さが低く、回復性に乏しいということが数値化されます。
2.試験方法
毛髪の方向をそろえてシート状に並べ、両端(毛根側、毛先側)を固定して一定速度でアーチ状(最大曲率 2.5cm-1)にカーブさせます。このときのカーブの大きさと、カーブさせる際に必要な力を計測して曲げ剛さ、回復性を算出します。
①測定前の準備:試験に使用する毛髪を選別する
②選別した毛髪を処理し、毛髪サンプルを作成する
③毛髪サンプルの測定:測定機に毛髪サンプルをセットして測定する
シート状にした毛髪の両端(毛根側と毛先側)をつかんで、いずれか片方の端を一定速度でカーブさせる
※毛髪サンプルの作成~測定は、室温20℃、相対湿度65%の環境下で行う
3. 試験結果と評価方法
●曲げのアニメーション
試験結果は、グラフに表記されます。
グラフのヨコ軸は、シート状の毛髪を曲げた時のカーブの大きさ(曲率)。タテ軸は、曲げるのに必要な力を表します。
グラフの右半分はシート状の毛髪を右にカーブさせたときの結果を表し、タテ軸(力)もヨコ軸(曲率)もプラス側にいくほど値が高くなります。反対に、グラフの左半分はシート状の毛髪を左にカーブさせたときの結果を表し、タテ軸(力)もヨコ軸(曲率)もマイナス側にいくほど値が高くなります。
●測定グラフ
・B値(ピンク色の→部分):この値が大きいほど曲がりにくいことを表します。左右にカーブさせたときの往路の力(タテ軸)が高くなる(角度が急になる)ほど、カーブさせる(曲げる)のに力が必要となり、曲げ剛いということです。
・2HB(オレンジ色の⇔幅):この値が小さいほど回復性が高いことを表します。つまり、左右にカーブさせたときの往復の力の差が小さいということは、曲げたときとほぼ同じ力で元に戻るということです。
4. シャンプーやコンディショナーなど、ヘアケア製剤の開発に
毛髪の試験では、主にサンプルを比較して行う試験方法が一般的で、毛髪表面特性試験(摩擦係数)や毛髪引張特性試験(破断加重、延伸率)も、同様に比較試験を行います。「毛髪サンプル作製」のようにサンプルが3種類あれば、1つずつ順次測定して、結果を比較します。未処理時と処理A、処理Bそれぞれの毛髪の状態を数値化して比べることができます。
シャンプーやコンディショナーを使用することで毛髪のハリやコシの風合いがどれくらい変化するかを把握し、より良いヘアケア製品の処方開発にお役立ていただけます。
毛髪曲げ特性は、風合いを構成する物性のうちの一つです。より多角的に検証するには表面特性や引張特性、SEMによる表面観察など、他の毛髪試験と併せて実施されることをおすすめいたします。
・試験に用いる毛束は弊社でも手配できますので、試験品のみお送りいただいても実施可能です。(処理した毛髪のみ、または毛束と試験品をお送りいただいても実施可能です。)
・送付時は、毛髪を折り曲げない、つぶさないようにしてお送りください。
・コンディショナーなどの試験品はこぼれないように、また、容器が破損しないようにしてお送りください。